2 (水平)うず度移流

うず度移流の考え方は温度移流と同じで,温度の替わりにうず度を考える。

 

 図6.54 温度移流の例

 

     Vは等うず度線に直角な方向の風速

     凾獅ヘVの方向の距離

     刄トを距離凾獅ノおけるうず度差

とすれば

 

うず度移流量=−V(刄ト/凾氏j     (6.56)

である。

6.55のうず度分布と流れで,

・風がうず度の大きい方から小さい方へ,等うず度線を横切って吹いているときが正のうず度移流。

      図6.55 うず度移流

図6.56 うず度移流の例:数値予報天気図(気象庁)

              500hPa等圧面高度,うず度

 

     渦度が小さい方から大きい方へ吹いているときは負のうず度移流。

     等うず度線と風が平行であれば,うず度移流は0(ない)。

 

6.56は500hPaの等圧面高度線とうず度分布である。500hPaではよい近似で地衡風が成立するので,

風は等高度線に平行に吹いていると考える。縦線の領域が正うず度,白抜き領域が負うず度である。

九州西海岸は正のうず度移流,九州東海岸は負のうず度移流になる。

     正(負)の(うず度移流)であり,

     正(負)うず度の(移流)ではない。

 

参考:上昇流

これまで,主に大規模現象の水平運動について述べてきた。温帯低気圧などの大規模現象は水平スケー

ルは数千kmであるが,鉛直スケール20km以下(対流圏の厚さ)である。つまり,鉛直方向の運動
(上昇・下降流)は水平運動に比べて桁が小さく,近似的に無視できる(静力学の式)。

しかし,雲ができ雨が降るのは上昇流があるためで,天気が良いのは下降流があるからである。

気象庁の数値予報では,上昇流は連続の式から求めているが,上昇・下降流を表わすものにω(オメガ)

方程式がある(式は省略)。

このωにおける主要な役割をするものに

     上層のうず度移流 :正(負)のうず度移流は上昇(下降)流に 

 寄与。

     下層の温度移流  :暖気(寒気)移流は上昇(下降)流に寄与。

     もう一つ,物理過程の非断熱効果と呼ばれる凝結熱があるが,ここでは触れない(熱力学の範囲)。

 

ω(オメガ)方程式は定性的には次のようになる。

上昇流ω≒(上層うず度移流)+(下層温度移流)+(非断熱効果)

偏西風じょう乱(温帯低気圧,移動性高気圧)では右辺第3項の寄与は小さく,通常は無視する。

6.54,図6.56は気象庁数値予報天気図で,図6.54に700hPaの鉛直P速度ωが示されている。この

時,定性的に

700hPaの上昇流ω≒(500hPaうず度移流)+(850hPa温度移流)

と考える。

 上昇流域で,上式右辺の2つの項が両方とも上昇流に寄与するとは限らない。うず度移流が上昇に,

温度移流が下降流に寄与するときは,うず度移流効果が温度移流効果より大きければ上昇流になる。