6.3.3 移流

力学の範疇ではないが,気象において「移流」の考えが必要である。温度とうず度を例にとって述べる。

1 (水平)温度移流

「移流」の意味は読んで字のごとく,移り流れてくることである。温度が高い空気(暖気)が流れてくれば暖気移流
寒気が流れてくれば寒気移流である。同じ温度の空気の場合は温度移流=0(なし)である。

6.53は風と温度分布を示す。

図の(a)である時間を考えると,

     地点Aで等温線に直角に風速Vの風が吹いて,Aよりも高い温度の空気が流れて来る。

     距離凾獅ナの温度差(温度傾度)が変わらないときは,風速が大きければ,より遠くのより高温の空気が流れて      

来る。風速が小さければ,近くの温度があまり変わらない空気が流れて来る。

     また,風速Vが変わらなければ,距離凾獅ナの温度差(温度傾度)が大きいほど高温の空気が流れて来る。温度
差が小さければ,近くの温度があまり変わらない空気が流れて来る。

 

 

   図6.53 温度移流

 

地点Aにおける温度移流は

 

Aにおける風速Vは等温線に直角な方向の風速

・凾獅ヘVの方向の距離

・凾sを距離凾獅ノおける温度差とすれば

温度移流量=−V(凾s/凾氏j      (6.55)

 

で定義される。

 

図の(b)は寒気側から暖気側へ等温線を横切って風が吹いているから寒気移流である。

移流の式で速度と距離はベクトルである。風が吹いていく方向を+方向とする。

したがって,温度差を計算するときも風の吹く先の方から元を引く。

(a)では凾s=T−T

(b)では凾s=T−T

とする。

 

6.54は850hPaの風・気温,700hPaの上昇流(鉛直P速度:ω)である。気象では沿直流を気圧Pの時間変化で
表すことが多い。上昇すると気圧が下がるのでωはマイナス,下降すると気圧は上がるのでオメガはプラスである。
図の縦線のところはωがマイナスであり下降流域である。実線は気温で3℃毎に描いてある。図において,

 

     東海地方〜関東地方では風が等温線を横切って,気温が高い方から低い

方へ吹いているので暖気移流。

 

     九州〜東シナ海では風が等温線を横切って,気温が低い方から高い方へ吹いているので寒気移流。

     関東のすぐ南東海上に等温線と風向が平行なところがあるが,そこでは温度移流は弱いか,殆ど0になっている。

同じ温度の空気が来ることは暖気・寒気が来ることではなく,温度移流は0である。