6.3.2 うず度

前述の高層天気図を見ると大気は南北に脈打ちながら流れている。この流れを図6.45のように,うず(じ

ょう乱)と平行な流れ(東西流,帯状流)とが重なったものと考える。うずの概念としては台風,低気圧・

高気圧を考えれば良い。

また,図6.46のように平行な流れでも速度差(風速シアー)があれば,うずが内在している。図の左の

ように流れの直角方向にシアーのある状態で,この流れの中に棒状の空気塊があって流されるとする。

その棒状の空気塊は始めは流れに直角であっても両端の流速が異なるため回転して傾いていく。巨視的

には平行流でもうずを内在している。このようなうずの強さを量的に表わすものが「うず度」である

 

 

 

図6.45 うずと平行流


     図6.46 平行な流れとうず

 

6.47は数値予報の500hPaの等高度線とうず度の分布図である。縦線部分は正うず度,白抜き部分

は負うず度を示している。

     この図のうず度は正確には相対うず度の鉛直成分といい,記号ではζ(ツェータ)と記す。

     また,うず度は流れの全体を表わすものではなく,大気中のそれぞれの点(空気塊)について定義で

きる量である。

     「相対」とは回転している地球に対して相対という意味である。

 

      図6.47 500hPa天気図(気象庁)

 

 

大気中に渦がなくても,慣性座標では大気は地球自転軸のまわりを回転しているので,それによるう

ず度がある。これを惑星うず度といい,大きさはコリオリパラメータf(2ΩSinφ)である。fとζを

あわせたものを絶対うず度という。

絶対うず度=f+ζ            

大規模スケールで収束・発散がなければ絶対うず度は保存され,

f+ζ=一定               (6.52)

である。

空気が北上するとfが大きくなり(緯度φが大きくなり,Sinφが大きくなる),(6.52)式が成立する

ためには相対うず度ζは小さくなる。南下するときはその逆である。我々は地球上で気象を考えるから,

普通は相対うず度を使えば良い。