6.3     収束・発散(連続の式),うず度,移流

ここでは他の重要な事である発散・収束(連続の式),うず度,移流について述べる。

   図6.40 発散・収束と鉛直流

 

 

6.3.1 収束・発散

1 水平発散

     図6.23の地上天気図を見ると,関東付近の低気圧の周りの風は低気圧中心の方へ吹き,空気が集ま

り空気は収束している。集まった空気は地中や海中には潜り込めないので上昇し,雲が出来て雨が降る。

上昇した空気は対流圏界面(安定層)を突き破ることが出来なくて周囲へ吹き出し発散する。

一方,日本の東海上の高気圧周辺では空気は周りに吹き出して発散する。そうすると高気圧の所では

空気が足りなくなり,上層から空気が下降してくる。上層では下降する空気を補うために空気が収束する

(図6.40)。図は下層収束・上層発散の場合を示すが,下層発散・上層収束の場合は逆になる。図の左で発散を
+符号,収束を−符号で表わすと,中層で0のところがあるはずである。そこを非発散層といい,対流圏中層の
500hPa(5000m)付近が近似的に非発散層と考えられる。

 

地表で収束するとその空気は上昇する。地表のすぐ上の層でも水平収束していれば,そこでは地表から

上昇してきた空気と水平収束してきた空気の合計が上昇することになる。その上の層でも同じことが起

こり,図6.40左の場合は発散=0のところまでは上昇流は強まり続ける。その上の発散層になると下か

らの上昇よりも水平発散が弱い間は上昇流である。しかし,上昇流は次第に弱くなり最後は0になる。

 

収束・発散は,ある地点,領域における空気の収支である。図6.41のように

     地点BとCの距離が凾

     地点BとCを結ぶ方向にVn1,Vn2の風が吹いている

とする。このときにAにおける

(速度)発散D(div:ダイヴァージェンス)は次式で表される。

D=(Vn2−Vn1)/凾     

            =凾磨^凾              (6.48)

単位:/s=s−1                     

このときの風向はBとCを結ぶ方向で,速度発散・収束という。単位は単位時間あたり(毎秒)で少

し分り難い。

Dが正ならば速度の水平発散がある

負ならば速度の水平収束がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      図6.41 発散−1

図6.42 発散−2

 

次に実際に数値予報などの数値計算で使われる方法を述べる(図6.42)。

    平面上の格子点を考え,各格子点の風が与えられている

     格子点の風の東西成分uと南北成分vを使って計算する。

     (図6.42の左図):実際の観測された風は矢印のように不規則な分布をしている。

     これから格子点の風の東西,南北成分を計算する。この計算方法は本論の範囲を超えるので省略する。

     (図6.42の右図):格子点Aの発散は,東西方向と南北方向の発散を別々に求め,合計する。

     東西成分uによる発散=(u−u)/凾

               =凾普^凾

     南北成分vによる発散=(v−v)/凾

=凾磨^凾

D=(凾普^凾)+(凾磨^凾凵j    (6.49)

[問題]6.40でBCの距離が10kmで

@     n2=5m/s, Vn1=−2m/s

A     n2=−5m/s, Vn1=2m/s

のときの発散を計算しなさい。

   答 @7×10−4/s

      D=((5)−(−2))m/s/10×1000m

       =7×10−4/s

     この場合はDが正だから発散。

     A−7×10−4/s

      D=((−5)−(2))m/s/10×1000m

       =−7×10−4/s

      この場合はDが負だから収束。

 

 

 

 

 

 

 

図6.43 発散−3

 

 発散について,次の考え方もある。(説明の仕方)がある(図6.43)。

     ある時間に領域(面積素分)Sの空気を考える。

     凾博條ヤ後に領域がS+凾rになったとする。

     領域Sに微小なs(線素)を考え,それに垂直にV

     風が吹いている。      

     lはSと凾rの距離でsに垂直である。                              

l×sはこの部分での領域の拡がりで,これを領域の       

     全体で考えると領域の拡がり凾rになる。

Sに対する単位時間あたりの凾rの割合が発散である。

D=(1/S)(凾r/凾煤j        (6.50)

       単位:(m/s)/m=s−1