6.38は温度風の例である。

図のA

     風向が下層〜上層へ反時計周り(低気圧性)に変化している場合。

     層厚内の平均温度分布は温度風の左手側が低温,右手側が高温になる。

     層厚内の風は反時計回りに変化しているので,点線矢印のように吹いている。

 

風が低温側から高温側へ等温線を横切って吹いているので,寒気移流になっている。移流については6.3

節で説明する。

図のB

     風向が時計回り(高気圧性)に変化している場合。

     風が高温側から低温側へ等温線を横切って吹いているので,暖気移流になっている。

図のC

     下層と上層の風向が変化しない場合。

     このときも温度風はあるが,温度移流はない(風向と温度線が平行)。

図6.38 温度風と温度移流

 

このように,ある地点で高層風の観測値があれば寒気移流,暖気移流が分る。寒気移流は空気の下降流

に,暖気移流は上昇流に寄与し,天気に関わってくる。

 

6.35から対流圏では平均的に低緯度が高温部,高緯度が低温部になっていて,中緯度で水平温度傾

度が顕著である。また,上層ほど風が強く,中緯度の対流圏上部にはジェット気流がある。

 

6.39の左のように2つの等圧面の層厚は(6.16)式から高温の低緯度が低温の高緯度よりも大きく

なる。図の右のように各層を下層〜上層まで積み重ねると,上層ほど等圧面上の等高度線は混む。つま

,(6.36),(6.37)式から地衡風は上層ほど強くなる。図6.35で南北の温度差(温度傾度)は中緯

度で大きく,層厚差も大きいので上層の地衡風も大きくなる。

 

 

  図6.39 層厚と地衡風

 

温度風のまとめ]

     温度風は地衡風を基礎としたものであるから,平衡・定常状態を示すものであり,時間変化(風の変化)

について説明するものではない。

     北半球では高温側を右に低温側を左に,南半球では高温側を左に低温側を右に見る方向に風が吹き,

高度に伴い風速を増していく。

     南北両半球とも対流圏内の水平方向に見た気温の南北傾度は中緯度帯に集中しているため,その地方

では高度に伴って地衡風速が大きくなり,対流圏上部では強い偏西風が吹くことになる。この状態を

温度風の関係という。

 

また,成層圏・中間圏の冬の極夜ジェット(西風)は,高度30〜50kmの上部成層圏の赤道−冬極の強

い温度差に対応したものである。また,夏の東風は赤道(低温)と夏極(高温)の温度差に対応したも

のである。

このように,地球規模の東西風は温度分布と温度風の関係で結びついている