6.2.5 温度風
図6.35をみると,対流圏ではどの高度でも温度は低緯度が高く,高緯度で低くなっている。また,中
緯度で温度の南北傾度が大きく,上層に向かって風速が大きくなっている。この温度分布と風の関係を
表わすものに温度風という考えがある。
風を地衡風で近似し,地衡風の高度変化(鉛直シアー)と気温傾度との関係を温度風の関係式という。
温度風は二つの高度Z2(P2)とZ1(P1)の地衡風Vg2とVg1の差で定義される。
つまり,地衡風の鉛直シアーであり実際に吹いている風ではない。
図6.36で,上層と下層の地衡風がVg2とVg1のように吹いている。
このときの鉛直シァー=Vg2−Vg1 を図式で求める。風はベクトルであり、ベクトル差(ベクトル
の引き算)を考える。
図6.36 温度風,鉛直シアー(ベクトル)
・ 上層・下層の矢印の長さは風速の大きさを示すようにする。
・ 矢印の方向は風向を示すようにする。
・ 風を示す矢印の根本を合わせ,下層の矢印の頭から上層の矢印の頭へ線を引く。
・ これが風の鉛直シアー,つまり温度風であり,この向きが温度風の風向を,長さが風速を表わす。
・ これが図で求める方法である。
次に温度風を導く。
静力学平衡の式(6.15)
凾o=−ρg凾y (6.14)
=−[gP/(RT)]凾y
(6.15)
を書き直すと,
凾o/凾y=−gP/(RT) (6.44)
となり,気圧の高さ方向への変化は温度と関係することがわかる。
図6.37 層厚
hを2つの気圧面の鉛直方向の高度差,層厚(凾y)とすると(6.16)式から
h=(RTm/g)(lnP1−lnP2)
=(RTm/g)ln(P1/P2)
ここで,TmはP2,P1間の平均温度。
となり,この式から,次の事がわかる(図6.37)。
・
気層の平均温度が高いと層厚は大きく,
・ 平均気温が低いと層厚は小さい
次に,温度風(2つの等圧面の地衡風の差)を求める。
高度Z2(P2)とZ1(P1)の地衡風をVg2とVg1とすると,(6.36)式から
Vg2=−(g/f)(凾y2/凾氏j
Vg1=−(g/f)(凾y1/凾氏j
である。
温度風VTは
VT=Vg2−Vg1 =−(g/f)((凾y2−凾y1)/凾氏j
=−(g/f)(凾/凾氏j
(6.45)
(6.16)式から
VT =−(g/f)凵i(RTm/g)ln(P1/P2))/凾
=−(R/f)ln(P1/P2)凾sm/凾
(6.46)
したがって,温度風は気層の平均気温の水平傾度に比例する
ことになる。
温度風の東西成分uT,南北成分vTは次式で表せる。
uT =−(R/f)ln(P1/P2)凾sm/凾
vT = (R/f)ln(P1/P2)凾sm/凾
(6.47)
(6.45)式の温度風の式を見ると,地衡風の式の高度差が層厚差つまり,気層の平均気温の差に変わってい
るだけで,あとは全く同じ形である考え方も地衡風と同じで良い。すなわち,温度風は左手に寒気(低温)を,
右手に暖気(高温)を見るように吹くと考える。地衡風の低圧を低温,高圧を高温と置き替えれば良い。