(2)地上風と地衡風

 自由大気(高度,約1000m以上)では地衡風が良い近似で成立するが,大気下層は地表の摩擦効果が効くために

風は等圧線を横切って吹き,地衡風近似では実際の風を上手く表現できない。

 

 気圧傾度力,コリオリ力,摩擦力が釣り合っている時の運動方程式を考える。地表面の摩擦力は速度と逆方向に

働く

6.28のように,

      等圧線に直角に働く気圧傾度力をG

      風速Vによるコリオリ力をC摩擦力をF

      風が等圧線と交わる角をa

とすると,緯度φの地点では単位質量の運動方程式F=mαは

気圧傾度力+コリオリ力+摩擦力=加速度=0 

このとき,

 風向方向   : GSina=F

 風向と直角方向: GCosa=C=2ΩVSinφ=fV (6.27)

の関係が成り立つような風向・風速になる。

 

 

 

    図6.28 地衡風と摩擦 

 

また,摩擦力の大きさは気圧傾度力の風向方向の成分と釣り合うから,

F=GSina=Sina(2ΩVSinφ)/Cosa

    F=(2ΩVSinφ)Tana

=fVTana              (6.28)

となる。

 摩擦力が大きいほど実際の風と地衡風との差は大きい。また,風が等圧線を横切る角度も大きく,空気は低気圧側

に流入する。風が等圧線を横切る角度は摩擦力の大きな陸上では30〜40°,摩擦力の小さな海上では20〜30°前後

である。

地表付近で低気圧の閉じた等圧線の周りから中心に向けて空気が流れ込む (収束) と,その空気は地中には入れないので

強制的に上昇させられる(連続の式:後述)。反対に高気圧の場合は,空気は閉じた等圧線を横切って外側に吹き出し,

その空気を補うために上空の水蒸気の少ない空気が下降して来て,天気は良い。