2 気圧傾度力

 大気の運動はニュートンの運動の法則にしたがい,F=mαが適用されることは繰り返し述べてきた。

地球に固定した座標では力Fの一つとしてコリオリ力があることが分った。

次の力として気圧差による力,気圧傾度力について述べる。気圧傾度は単位距離あたりの気圧差であ

る。気圧傾度力は気圧が高い方から低い方へ働く(高気圧から低気圧へ向かう)。ちなみに、高気圧は回

りより気圧が高いところ,低気圧は回りよりも気圧が低いところである。

普通は気圧をhPa(ヘクトパスカル)で示すが,物理における単位はPa(パスカル)を使う。h(ヘ

クト)は100の意味で,1hPa=100Paである。

 

 大気中では,「ある面(高度)の気圧はその面の上(鉛直方向)にある単位面積当たりの空気の重力に

等しい」ことがほぼ100%成立している。ここで,「その面の上」とは大気上端までのことである。気圧

は大気の圧力で,流体(水や空気など)中では圧力はあらゆる方向に働く。ここでは水平面(等高度面,

等圧面)上で圧力差がある場合(高気圧,低気圧)を考える。

 大気中では,「ある面(高度)の気圧はその面の上(鉛直方向)にある単位面積当たりの空気の重力に

等しい」ことがほぼ100%成立している。ここで,「その面の上」とは大気上端までのことである。気圧

は大気の圧力で,流体(水や空気など)中では圧力はあらゆる方向に働く。ここでは水平面上で圧力差

がある場合を考える。

 

6.26左図はある等高度面(例えば地上天気図)の気圧分布である。実際の等圧線は大なり小なり曲線

を描くが,

大規模スケールでは,ある時間・ある場所では近似的に等圧線は平行(直線)とみなすことが出来る

この条件を忘れないように。ここの議論はあくまでも大規模スケールの現象に対してであり,発達した

低気圧,台風,竜巻などでは等圧線を平行と見ることはできない。これらの現象では円運動を考えなく

てはならない。

 

図6.26 気圧傾度力(一般気象学:小倉義光から作図)

 

ここで2つの等圧線の間に直角四辺形ABCDを考える。

     ABとCDは等圧線P,P+凾oにあり,平行で距離を凾

     ADとBCは等圧線に直角で距離を凾獅ニする。

ABCDを底面とし深さを凾嘯ニする直方体の空気塊を考える(図6.26右)。

この空気塊へ働く水平方向の力を考える。

     ADD’A’面とBCC’B’面は同じ等圧線上にあり,圧力差はない。

     ABB’A’面とCC’D’D面は圧力差がある。

・ ABB’A’面の圧力:P凾欠凾

P(単位面積あたり)×面積(凾戟~凾噤j

・ CC’D’D面の圧力:(P+凾o)凾欠凾

したがって,両面には差し引き 凾o凾欠凾噤@の気圧差がある。この空気の立方体の単位質量あた

りで考える。この先,単位面積あたり,単位堆積あたり,単位質量あたりという言葉がしばしば出てく

るが,何かを比較するには同じ基準で話をする必要があるからである。

 

     この空気塊(直方体)の体積は凾欠凾紫凾

     空気の密度をρとすると空気塊の質量はρ凾欠凾紫凾噤ik

 

気圧差を質量で割り,気圧が大きくなる方向と力の方向が逆なので−符号を付けると,単位質量あた

り,

水平方向の気圧傾度力=             (6.24)

となる。

気圧傾度力は等圧線と直角に,高圧部から低圧部に向かって働く

 

 (6.24)式で(凾o/凾氏jという式がある。このように,ある方向の単位距離あたりの差(変化量)

を傾度という。気圧の場合は気圧傾度,温度のときは温度(気温)傾度というように使う。

 

[問題] ある水平面で大気が静止している。このときは地球自転の影響はなく,なんの力も働いてい

ないとする。その状態で気圧傾度力だけが働いた。気圧傾度力はどの場所でも同じで,時間

変化はしないとする。気圧傾度を5hPa/100km,大気の密度を1.2kg/mとした時,次

の問に答えなさい。

@      大気中の空気塊に働く気圧傾度力

A      初めに静止していた空気塊の1時間後の速度。

 

 答 単位質量(1kg)を考える。単位を入れて計算しなさい。

  速度変化,加速度,力が問題になるときはF=mαを思い出す!

  問題文の条件をしっかり考える!

   @ 0.004167(kgms−2):(6.24)式から。

気圧傾度力(の大きさ)

=(1/1.2)(5×100/(100×1000))

     =0.004167(kgms−2):−符号(向き)は不要。

     A 15m/s

    初めは速度v=0,1時間後(凾煤jに速度がv,

    凾博條ヤで速度が凾磨≠磨|0増加した。

    加速度=速度変化量/時間変化量=凾磨^凾

    F=mα=1(kg)凾磨^凾煤0.004167(kgms−2

    凾磨0.004167(kgms−2)凾

      =0.004167(kgms−2)×60×60(s)

      ≒15m/s