地球自転に関係しない慣性系(絶対空間)から見れば,図6.20で緯度φの地点Pを地球表面
に相対的に西から東に速度uで流れる単位質量の空気塊の速度は
地点Pの地球自転の速度=RΩ=rCosφ・Ω
と
地点Pに対する速度=u
を加えた
(u+rCosφ・Ω)
になる。したがって,その単位質量の空気塊に働く力をFとすると
F=mα
=1(単位質量m=1)×求心加速度
=(円周速度)2/(回転半径)
=
:(a+b)2=a2+2ab+b2
*地球の自転角速度は回転運動をしている物体が単位時間に回転する角度であって,単位はラジ
アンrad:1回転
360度 = 2π rad。
一方,地球に固定した座標で見ると,この空気塊の速度uだけを考えればいいので
F=u2/(rCosφ) :(6.9)式を参照
となる。しかし,(6.17)式が正しい運動方程式であるから
Ω2rCosφ+2Ωu
は何か余分な力ということになります。そこで,(6.17)式を書き直して,
とする。地球上の座標で考えた方がやりやすいから,左辺を空気に働く力として次のように考え
る。
・ 地球回転による見かけ上のΩ2rCosφと2Ωuという力が地球自転軸から外向きに働いて
いる。
・ 実際に働いている力と2つの見かけ上の力の合力が,物体の質量と地球に相対的な加速度の
積に等しい(F=mα)
・ つまりΩ2rCosφと2Ωuの力が地球の自転軸の外側に向かって働き,Fとの合力が地表面
に相対的な運動をする空気塊に働いている。
地球が自転しているために緯度φの地点に現れた見かけ上の力の
Ω2rCosφは遠心力, (6.19)
2Ωuはコリオリ力 (6.20)
で,遠心力もコリオリ力もその作用する向きは自転軸に対し直角外向きである。
私達は地球表面にいるから,大気の運動を記述するのも地球に固定した座標が便利である。気
象解析では地点の水平面上にx(東西)軸,y(南北)軸をとり,鉛直方向にz軸をとるため,
コリオリ力も水平成分と鉛直成分に分けておく必要がある。
緯度φの地点P(図6.25)において水平面を考える。Pにおいて地表面に接し,図6.25右の
2ΩuSinφの矢印の線に沿って紙面に直角な面が考える水平面になる。(断面図から水平面を考
える練習をすること。)uはPを通って紙面に直角方向である。
φと三角関数(Sin,Cos)から
コリオリ力の水平成分=2ΩuSinφ (6.21)
コリオリ力の鉛直成分=2ΩuCosφ
空気の鉛直運動ではコリオリ力の鉛直成分は重力に比べて非常に
小さいために無視できる。ちなみに,重力加速度g=9.8m/s2に対してコリオリ力の鉛直成分は,
u=100m/sとしても2ΩuCosφ=0.015m/s2Cosφとなる。Cosφの最大値は1(赤道でφ=0,
Cosφ=1)である。
コリオリ力の東西成分の導き方(後述)は少し面倒なので結論だけを先に述べる。空気が経度
線に沿って速度vで動くとき,コリオリ力は南風の時は東方向へ働く。速度の南北成分をvとす
ると,
コリオリ力の東西成分=2ΩvSinφ (6.22)
これまで風の東西,南北成分別に述べたが,一般的な風について言うならば
北半球では
コリオリ力は風の進行方向に向かって,直角に右手方向に働く。
南半球では
コリオリ力のまとめ。
・ コリオリ力は地球が自転しているために地球上の座標系に現れる見かけの力。
・ 水平速度ベクトルに対し北半球では進行方向の右直角方向に,南半球では左直角方向に働き,
運動の向きを変える。
・ 運動の速さを変えることはないため,転向力とも呼ばれる。
・ 緯度φのところで水平速度Vで運動している空気塊に働くコリオリ力の大きさは,
2ΩVSinφになる。