これから風について述べる。風は空気の運動である。これをニュートンの力学の法則(運動方

程式:F=mα)を使って表す。ただし,いくつかの前提条件がある場合についてである。

 

     風の水平成分について述べ,鉛直方向の運動は取り扱わない。

     運動方程式の左辺の力(いくつかの力の和)=0とする。

運動方程式の左辺の力が0でなければ,右辺のα(加速度)が生じて風が変化する。しか

  し力が0と仮定するので加速度=0となり,風は変化せずに定常流を表す。

     空気に働く力:後述

   気圧傾度力  コリオリ力(転向力)  摩擦力

   遠心力    

重力:鉛直方向であり,水平運動には無関係である。

     大規模な流れ,台風・発達した温帯低気圧,竜巻などのスケールが異なる現象によって,
 考
える力も異なる

 

6.2.2 地衡風

1 コリオリの力(見かけの力・転向力)

地球が自転せずに慣性座標系(宇宙空間に固定された座標系)内に静止しているならば,大気の

運動は地球上で観測された風をそのままニュートンの力学の法則に適用すればよい。しかし,地

球は南北両極を結ぶ軸(地軸)の回りを自転している。

我々は地球上で生き,生活をしている。わざわざ宇宙から見た運動を見る必要はないし,地球

を基準とした方が便利である。しかし,便利さには代償がついてくるわけで,ちょっと妙な分り

にくい(?)ことが出てくることになる。

気象学では大気の運動は地球表面に固定した座標系で記述される。例えば,西の風5m/sは地

表面に相対的に西から東に向けて秒速 5m/sで空気が流れていることである。空気の動きが地球

の回転速度よりも2m/s遅ければ,東の風2m/sが地球上で観測されることになる。このような地

球表面に相対的な大気の運動を地球表面上に固定した座標系で見ると,地球が自転しているため

の影響が現れる。

例えば北極点から赤道上のある地点に向け真南にロケットを発射したとする。

     ロケットは宇宙空間から見れば,地球重力以外の作用を受けずにまっすぐに南に向かって飛

んでいる。

     地球表面上で見るとロケットが飛んでいる間に地球が回転し,目標とする地点よりもずっと

西に行ってしまうことになる。

     地球が自転していることを知らずにこの状態をていると,南向きに飛行するロケットに何か

西に向かわせる力が働いていることになる。

     6.24のように回転している盤に定規を動かないようにして線を引くと曲線になってしま

う。

 

図6.24 コリオリ力

 

このように地球が自転しているために地球表面に固定した座標系に現れる見かけの力は,それを見出した
19世紀のフランスの数学者・物理学者であるコリオリ(G.G. de Coriolis 1792 〜

1843)の名を冠してコリオリの力と呼ばれる。

下図(図6.20再記載)のように北半球の緯度φのところで空気塊が地表面に相対的な速さu

で西から東に流れているとする。

 

 

 

図6.20 帯状流と自転軸中心の角運動量(再記載)

 

空気塊の流れは地球表面の緯度線に沿う円運動である。

     円運動をしていることは運動の向きが円周に沿うように絶えず変化していることになるか

ら,加速度(力:F=mα)が働いていることになる。

     加速度(力)が働かなければ宇宙空間へ飛び出してしまう。

     その加速度は求心加速度といい,円運動の中心に向かう方向に作用し,その加速度による力

を求心力という。

     円運動をする物体には求心力と反対の向きに遠心力が働き,求心力と釣り合って物体は円周

に沿って円運動を保つことが出来る。求心加速度は

求心加速度=(円周速度)/(回転半径)