5 円運動
図6.6,図6.7の天気図を見ると,大気は川の流れのようにうねりながら,あるところでは丸いうずに
なったりしている。また,地球は球体でありその周りを大気が流れている。空気の動きを考える時に台
風などでは円運動として取り扱う。ここでは円運動についての基本的事項について述べる。
図6.17 円運動
水平面で角速度ω,半径rの円運動を考える(図6.17)。
角速度は1秒間に回った角度である。
円を1周するのにT秒かかったとすると,円の1周は360°だから角速度は360°/Tになる。角速度
の単位は毎秒当たりの角度というちょっと変わったものである。
気象(物理)では角度を度ではなくπ=3.14・・・でお馴染みのラジアンを使う。ラジアンでは円1
周は2πである。
360°=2π,180°=π,
になり,ここで円周の長さをLとすると,
L=2πr
π=L/2r
図6.17で物体が水平面上で角速度ω(一定),半径rの円運動をしているときを考える。物体(気象
では空気塊)が1周するのにT秒かかったときの角速度ωは
ω=2π/T(s−1=/s)
である。
円の1周は2πrで,T秒で1周したときの速さは
V=2πr/T=rω (6.4)
と表わせる。また,図でx軸とOPがなす角をωt(t秒で回る角度)とすると,Vのx軸方向の速度u
とy軸方向の速度vは
u=−V・Sinωt=−rω・Sinωt
v= V・Cosωt= rω・Cosωt (6.5)
V2=u2+v2=(−rω・Sinωt)2+(rω・Cosωt)2
=(rω)2((Sinωt)2+(Cosωt)2)
=(rω)2 :(Sinωt)2+(Cosωt)2=1
V=rω
求心加速度α=rω2
時間t1=tの時に(6.5)式で u,v が与えられている。
時間が凾狽スった時を
t2=t1+凾煤@,u2=u+凾普@,v2=v+凾
と表わす。
加速度は単位時間あたりの速度変化であるから,加速度のx方向の成分αxと加速度のy方向の成分αyは
三角関数の定理から。
Sinω(t+冲)=Sin(ωt+ω冲)
=SinωtCosω冲+Sinω冲Cosωt
Cosω(t+冲)=Cos(ωt+ω冲)
ここで,微小変化を考えてωtがωtに比べて非常に小さいとする。
例えば,1°=2π/360ラジアン=0.01745のとき,
Sin(0.01745)=0.01745 , Cos(0.01745)=0.99985
角度θが非常に小さい時には Sinθ≒θ,Cosθ≒1 と近似出来る。今は
θ=ω凾
と考える。そうすると(6.8)式は,
Sinω(t+冲)=SinωtCosω冲+Sinω冲Cosωt≒Sinωt+ω冲Cosωt
Cosω(t+冲)=CosωtCosω冲-Sinω冲Sinωt≒Cosωt-ω冲Sinωt
x方向の加速度αx=−rω2Cosωt
y方向の加速度αy=−rω2Sinωt (6.8)
となる。
αxとαyを合成すると,求心加速度αが求められる。
α2=(αx)2+(αy)2
=(−rω2Cosωt)2+(−rω2Sinωt)2
=(−rω2)2×((Cosωt)2+(Sinωt)2)
=(rω2)2×1 :(Cosωt)2+(Sinωt)2)=1
したがって,
求心加速度α=rω2
台風や発達した低気圧の風を考える時は近似的にある瞬間は円運動と見なすが,実際は図6.17の左側
のように空気塊が完全な円運動ではなく,らせん状に円の中心側に入って行く。この時に速度(風速)
を円の接線方向と空気塊の位置と円の中心を結ぶ方向に分けて議論することがある。それぞれを接線速
度,動径速度という(後述:傾度風)。