2 運動の第1法則

 運動(ニュートン)の第1法則

「物体は力が作用しない限り,静止または一直線上の一様な運動(等速度運動)を続ける。」

力が作用しないという意味は「複数の力が加わっている時でも,その力を合計したもの(正味の力)が

0であれば力は作用していない」ということである。

図6.12 等速度・加速度運動

6.12の左図

速度Vで方向1へ動いている空気に力Fa,Fb,Fcが働いたとする。

 方向1の向きを+,反対方向を−,

方向1の直角左向きを+,右向きを−とする。

 それぞれの力を

方向1の成分の力  (+Fa1),(−Fb1),(+Fc1)と,

直角の方向の成分力 (+Fa2),(+Fb2),(−Fc2)

に分ける。

 力の大小によって次の運動が考えられる。

@ Fa1−Fb1+Fc1=0

  Fa2+Fb2−Fc2=0

のときは,正味の力は0で,空気はそのまま等速度運動を続ける。

A Fa2+Fb2−Fc2=0 で

  Fa1−Fb1+Fc1≠0 のときは

 Fa1−Fb1+Fc1>0 のとき,方向は変えずに加速運動,

 Fa1−Fb1+Fc1<0 のとき,方向は変えずに減速運動。

B Fa1−Fb1+Fc1=0 で

  Fa2+Fb2−Fc2≠0 のときは

 Fa2+Fb2−Fc2>0 のとき,速度は変わらず方向は左よりに変わる。

 Fa2+Fb2−Fc2<0 のとき,速度は変わらず方向は右よりに変わる。

運動方向に直角に力が作用すると,速度は変わらないが向きが変わる。この時は運動方向と直角の向きの速度

(初めは0)が生じたわけで,正味の力は0ではない。

6.12右図は東西・南北の座標で考えたときで、考え方は同じである。力,速度,加速度をX軸(東西方向)と

Y軸(南北方向)に分けて考えれば良い。

6.13は運動の変化と力の方向との関係である。説明を簡単にするために力も単純化している。実際は複数の力

が働き,その大きさだけではなく働く方向も違う。

図6.13 力と速度変化

6.12のように力を水平面の座標の成分に分けて考え,風も同じように東西成分(x軸)と南北成分(y軸)で考え

る。力と風の関係を座標軸別に計算し,最終的にその合成で判断すれば良い。合成は成分に分けることの逆である

(図6.4の三角関数で復習を)。

1法則には別のいい方がある。物体の質量と速度の積を運動量という。物体の質量は変化しないので,

ニュートンの第1法則は

「力の作用が無い限り物体の運動量は保存される」

ことを意味する。

運動量=mVにおいて,質量mが変化しなければ,力が働かない時は等速度運動であるからVも一定である。

運動量の保存則

 図6.14で,質量M1とM2の物体が同じ方向へそれぞれ速度V1とV2で動いていた。質量M1の物体が質量M2の物体に

衝突し,速度がV3とV4に変化した。

 このとき

     M11+M22=M13+M24

が成立する。これを運動量の保存則という。

図6.14 運動量

3  運動の第2法則

「物体に働いている力は,その物体の質量と運動の加速度の積に等しい。」これが運動(ニュートン)の

第2法則である。

図6.15 力と質量・加速度の関係

力をF,質量をm,加速度をαとすれば,第2法則は

=mα                  (6.3)

と表され,運動方程式と呼ばれる。(6.3)式は力の定義も示している。

6.15で力と質量・加速度の関係をチェックしなさい。なお,台車と床の摩擦はないと仮定する。

量1kgの物体に作用して,加速度1m/sを生じさせる力の大きさを1ニュートン(N)と定義する。

(6.3)式で加速度αは風速をVとすると

F=mα=m(凾u/凾煤j

=(m凾u)/凾

:加速度は速度が単位時間に変化する割合。

:質量は時間により変化しない。

となり,

「物体の運動量(質量×速度)が単位時間に変化する割合は作用している力に比例する」

ことになる。

4 運動の第3法則

 作用・反作用の法則

「物体1が物体2に力を及ぼすとき,物体2は物体1に同じ大きさで反対方向の力を及ぼす。」

図6.16 作用・反作用

 物体に力が働いているのに物体が静止している場合を考える。

6.16左図で台の上に質量mの物体がある場合,物体は重力mで台を押している。他に力が働かなければ運動

の第2法則から加速度を生じ,物体は下へ動く。静止しているのは重力と同じ大きさで反対方向の力があるから

である。つまり,台が−mの力で物体を押し返していることになる。この力のことを抗力という。

次に右のように物体を水平方向に押し,水平運動を考える。水平方向には摩擦力が働く。物体を押しても動かな

いときに働く摩擦力を静止摩擦力といい,大きさは(定数)×(mg)で,定数は押す力によって変わる。また,

その方向は押す力の反対方向である。

大気の場合は,地表との間に摩擦力が働くが,上空1000mくらいから次第にその影響は小さくなる。摩擦を無視

できる大気を自由大気という。