6 いくつかの安定指数
大気成層の安定度を示すCAPE以外にも実用的な安定指数があります。
(1)SSI:ショワルター安定指数
積乱雲が発達し雷雨が発生するときは、次の条件のすべてまたは幾つかが揃うことが考えられます。
この条件を取り入れた安定指数にショワルター安定指数SSIがあります。
条件
@ 850hPaと500hPaの間は潜在的に不安定であり、この大気中に対流を起こす上昇流の原因として、
十分な収束、前線活動、地形上昇がある。
A 氷点下の高度まで発達した対流雲の中で、凝結が0℃以上の温度で起こる。
B 湿潤空気が上昇し、500hPaよりも下の自由対流高度LFCに達する。
C 上空の温度低下または下層で水蒸気増加を伴う温度上昇がある。
SSIは次の方法で求めます。850hPaの空気塊を乾燥断熱変化で持ち上げ凝結高度LCLまで上昇さ
せ、その後は湿潤断熱変化で500hPaまで上昇させる。このときの持ち上げた空気塊の温度T85−50を、
周囲の空気の温度T50(静力学的平衡にあり、温度分布は変化しないと仮定)から引きます。
SSI=T50−T85−50 (3.50)
この式からわかるように、SSIは浮力による上昇に関するものです。天気との関係は次のようにな
っています。
SSI <−3:激しい雷雨
+1〜−2:雷雨に可能性が増加
<+3:しゅう雨
(2)Lifted index
SSIは大気の状態は変化しない条件で、そのときの安定度を与えるものです。将来の雷雨発生には
安定度の予測が必要です。SSIは850hPaの温度、混合比(露点温度から)を使いましたが、温度とし
て日中の予想最高気温、露点温度は下層の100hPa間の空気層の平均混合比を用いたのがLifted
index
です。平均の混合比を使うのは、雷雨が発生する日は下層の対流混合が盛んになることを考慮したから
です。
Lifted index >0:安定
<0:不安定
(3)K−index
雷雨活動は次のものと深い関係があります。
@ 気温減率
A 下層の水蒸気
B 湿潤層の鉛直方向の拡がり
C 収束(発散)
D 相対うず度
K−indexは@〜Bの効果を取り入れた指数で、次の式で表わします。
K−index=(T850−T500)+Td850−(T700−Td700)
各項の意味は、
(T850−T500) :気温減率
Td850 :下層の水蒸気
(T700−Td700) :湿潤層の鉛直方向の拡がりと乾燥した中層空気の混入による空気冷却(対流抑
制効果)
です。雷雨との関係は次のとおりで、K−index=32が目安になります。
K−index >32:雷雨発生の86%
<32:雷雨非発生の83%