2 飽和大気の安定度
飽和した空気塊が上昇(下降)するときは、偽断熱変化を考えます。エマグラム上では偽断熱線(湿
潤断熱線)から気圧高度と温度が求まります。考え方は乾燥空気と同じです。図3.28を参照に周りの大
気の気温減率(温度分布)がγ1、γ2のときの安定度を考えてください。
飽和空気の安定度は
γ>Γs のとき、不安定
γ=Γs のとき、中立 (3.47)
γ<Γs のとき、安定
の関係から決まります。
エマグラムには乾燥断熱線、湿潤断熱線と書かれているときがあります。このときの湿潤断熱線は飽
和空気に対する偽断熱線です。また、湿潤空気も飽和の意味と(乾燥空気+水蒸気)が未飽和の意味に
も使われますから、そのときの文をよく読んでどちらなのか注意してください。
図3.28 飽和空気の安定・不安定
図3.29 湿潤空気の安定度
3 湿潤大気の安定度
これまで乾燥空気と飽和空気の安定を述べてきましたが、現実の空気は乾燥空気と水蒸気からできて
います。ここでは乾燥空気と飽和空気と区別するため湿潤空気とします。湿潤空気が未飽和の場合は近
似的に乾燥空気として取り扱います。
図3.29で周りの大気の状態曲線が@のときに大気の一部が上昇(下降)することを考えます。空気塊
が未飽和のときは乾燥断熱線に沿って(乾燥断熱減率Γdで)変化し、飽和しているときは偽断熱線(湿
潤断熱線)に沿って(湿潤断熱減率Γsで)変化します。いずれの場合も、上昇するときは周りの大気の
温度よりも空気塊の温度の方が高くて、空気塊は上昇を続けます。下降する場合は、空気塊の温度は周
りの大気よりも低く、空気塊は下降を続けます。大気が未飽和、飽和のいずれであっても不安定で、この
状態を絶対不安定といいます。自然界では通常は存在しませんが、夏の強い日射のときに地上付近に観
測されることがあります。
次に図のAの場合を考えます。大気の気温減率が乾燥断熱減率と湿潤断熱減率の間にあるときです。
この場合は図3.26、図3.28で見たように、空気塊が未飽和、飽和かで安定・不安定が決まります。
空気塊が未飽和のときは空気塊は乾燥断熱変化をしますから、空気塊の温度は上昇するときは周りの
温度よりも低く、下降するときは高くなります。空気塊は元へ戻り、安定です。飽和しているときは空
気塊は飽和断熱変化をしますから不安定です。このように空気が未飽和か飽和かによって安定・不安定が
決まる状態を条件付不安定といいます。飽和している条件では不安定の意味です。
対流圏の中〜下層では条件付不安定になっているのが普通です。条件付不安定な成層では温位は上層
ほど高くなっています。大気が乾燥または未飽和の場合、上層に向けて温位が増している成層は安定で
あるといえます。
図のBの状態では空気塊が未飽和、飽和のいずれでも、空気塊の温度は上昇するときは周りより低く、
下降するときは周りより高くなります。空気塊は元の場所へ戻り、安定です。空気塊が未飽和、飽和のい
ずれであっても安定で、この状態を絶対安定といいます。
湿潤空気の安定度は
γ>Γd のとき、絶対不安定
γ=Γd のとき、乾燥中立:空気が未飽和のとき
Γd>γ>Γs のとき、条件付不安定
(3.47)
未飽和のとき安定、飽和のとき不安定
γ=Γs のとき、湿潤中立:空気が飽和のとき
γ<Γs のとき、絶対安定
の関係から決まります。
飽和大気の安定度を相当温位(湿球温位)からみると、
刄ニe/凾y < 0 のとき 不安定
刄ニe/凾y > 0 のとき 安定 (3.48)
です。