図3.24は地上天気図です。気温などの観測値は観測した場所の値が記入されています。等圧線は
気圧の観測値を元に描いてあるのですが、観測したそのままの気圧を使ってはいません。
世界各地で気象観測が行われていますが、観測値の高度はまちまちです。前ページの問題の@の
ように、地表付近では高度が10m高くなると気圧は約1hPa低くなってしまい、500mの高さでは
50hPaの違いになります。観測場所の気圧(現地気圧といいます。)を使って等圧線を描くと、高い
所はいつも周りよりも気圧が低く、低気圧になってしまいます。
図3.24 地上天気図
これを防ぐために、現地気圧を海抜高度0mの気圧に換算(海面更正、海面補正)して使ってい
ます。この補正に静力学平衡の式が使われます。ここで、密度は観測していませんから(3.39)
式の密度ρを乾燥空気の状態方程式から求め、代入します。
凾o=−ρg凾y
P=ρRdTからρ=P/(RdT)、
凾o=−[P/(RdT)]g凾y
(3.40)
が得られます。ここで、
P:観測地点の気圧(現地気圧)。
T:観測地点と海面の大気の平均気温。通常、気温減率を0.65℃/100mとして、
観測地点の気温から海面の気温、2点間の気温を求めます。
凾y:観測地点の海抜高度。鉛直方向に増加。
凾o:観測地点と海面(海抜高度0m)との気圧差。鉛直方向に減少。
g:重力加速度 9.81m/s2。
Rd:空気の気体定数。
です。(P+凾o)が海面更正気圧になります。 地上気象観測では地上天気図を作るために、観測
点から海抜高度0mまでを空気があるとして(実
際は地中)気温減率を仮定して海面気圧を求めます。
[問題] 海抜高度600mで気圧が940hPa、気温が13℃であった。このときの海面更正気圧を小数点
1位まで求めなさい。
気温減率は0.65℃/100m、乾燥空気と仮定、
乾燥空気の気体定数Rd=287JK−1kg−1とします。
答え 1006.9hPa
(3.40)式で、気圧と高度の符号に注意してください。
海面を添え字0で表わすと、観測地点の気圧P=P0+凾o、観測地点の高度Z=Z0+凾yです。
海面〜観測地点の平均気温は、0.65℃/100m×600m+13℃から海面の気温を求め、13℃と
の平均を取ります。または、13℃に300m分の気温上昇を加えます。単位は気温はK、気圧は
Paですね。
凾o=−(gP/RT)凾y
=−(940×102×9.81×6×102)/(287×288.1)
=−6691Pa=−66.9hPa
P0=P−凾o=940+66.9=1006.9hPa
[問題] 海面気圧を1013hPa、大気の密度を1kgm−3とします。
@大気の厚さを求めなさい。
答え 10,337m
大気の上端の気圧を0hPa、海面高度0mとして、(3.39)式から計算します。気圧はPaで
計算します。単位に気をつけて!
(0−1013)×100=−1×9.8(Z−0)
Z=10337(m)
A海面の単位面積の上にある空気の質量を求めなさい。
答え 10340kg(約10トン)
気圧は単位面積当たりの力で、その上にある空気の質量による重力です。単位も書いてみま
しょう。
1013×100[Pa=N/m2=kg/(ms2)]=M[kg]×9.8[m/s2]/m2
M[kg]≒10,340[kg]