(4)比湿
混合比は湿潤空気を乾燥空気と水蒸気に分けて考えましたが、比湿は湿潤空気全体と、湿潤空気中の
水蒸気を比べるものです。湿潤空気の単位質量当たりの水蒸気の質量を比湿qといいます。単位は混合
比と同じでkg/kgまたはg/kgです。
q=Mv/M=ρv/ρ
=ρv/(ρd+ρv)
=0.622e/[P−(1−0.622)e]
(≒0.622e/P) (3.31)
式の変形は省略しますが、記号は混合比(図3.19)と同じです。比湿も混合比と同じ条件で保存されま
す。(3.31)式で水蒸気圧eを飽和水蒸気圧としたものを、飽和比湿といいます。飽和水蒸気圧は温度だ
けで決まりますが、飽和比湿は温度と圧力に関係します。
[問題]500hPaの温度0℃における飽和水蒸気圧6.11hPaの飽和比湿(g/kg)を求めなさい
飽和比湿=0.622e/[P−(1−0.622)e]
=0.622×6.11/[500−(1−0.622)×6.11]
=7.64g/kg
前の混合比の問題と比べると、混合比と比湿の差は小さいことがわかります。
(5)相対湿度
大気中の水蒸気圧とそのときの気温における飽和水蒸気圧の比を百分率(%)で表したものです。水
蒸気圧をe、そのときの気温における飽和水蒸気圧をesとすると(添え字sは飽和の意味)、
相対湿度=e/es×100(%) (3.32)
(=ρv/ρvs=q/qs≒w/ws)×100(%)
で定義されます。
大気中の水蒸気が飽和のときは相対湿度は100%です。最も体感的な湿度の表し方ですが、相対湿度が
同じでも気温が異なれば含まれている水蒸気量は異なります。
[問題] 温度20℃、水蒸気圧13hPaの空気の相対湿度を求めなさい。温度20℃の飽和水蒸気圧は
23.71hPaとします。
答 55% :相対湿度=13/23.71=0.548
(6)露点温度
水蒸気を含む空気を圧力と水蒸気量(混合比、水蒸気圧など)を一定にして冷却し、飽和に達した時
の温度を露点温度といいます。磨いた金属面やガラス面が冷却し、それに接する空気が飽和になれば水
蒸気が凝結して露を結び始めることから名付けられています。
飽和した空気では露点温度Td(d;dewpoint)は気温Tに等しく、気温と露点温度の差T−Td(T
≧Td)が大きい程、空気は乾燥しています。T−Tdのことを湿数といいます。
相対湿度f、気温T、露点温度Td、水蒸気量(水蒸気圧、混合比)との間には次のような関係があり
ます。添字dは露点温度、sは飽和の意味です。(Td)、(T)は露点温度Tdのときの、温度Tのとき
のという意味です。
f=e/es =es(Td)/es(T) :水蒸気圧
≒w/ws=ws(Td)/ws(T)
:混合比 (3.33)
露点温度Tdから水蒸気圧(e=es(Td))が、気温Tから飽和水蒸気圧es(T)が分り、相対湿度
が計算できます。混合比についても同様です。
(7)仮温度
湿潤空気について理想気体の状態方程式を考えるときに導入されるものです。湿潤空気の状態方程式
を乾燥空気の気体定数を使って簡単に表わすときに仮温度を定義します。
湿潤空気(乾燥空気+水蒸気)の状態方程式は次のように表わせます。
添え字dは乾燥空気、vは水蒸気を表わします。
R*は一般気体定数、Mは質量、mは分子量、Vは湿潤大気の体積、wは混合比、ε=mv/md=0.622
です。
P=Pd+e
=ρdR*T/md+ρvR*T/mv
=R*T(Md/md+Mv/mv)/V
=ρR*T(Md/md+Mv/mv)/(Md+Mv)
=ρRdT[(1+w/ε)/(1+w)]
=ρRdTv (3.34)
ここで、
Tv=T[(1+w/ε)/(1+w)]≒T(1+0.6w) (3.35)
Tvを仮温度といい、水蒸気混合比wが大きいほど、温度Tより高いです。
(8)湿球温度
図3.20の湿球温度計のように、温度計の感部を布で包んで水で濡らし、温度が一定になった時に計っ
た温度を湿球温度といいます。圧力一定で水の蒸発によって空気を冷却し、飽和に達したときの温度で
す。
湿球温度がTw(w:wet-bulb temperature)、その時の温度がT、気圧がPの時、次式が成り立ち、
水蒸気圧を計算することにより相対湿度が求められます。
乾湿計公式
A=Cp/(0.622Lv):Lvは蒸発熱
e=es(Tw)−A×P×(T−Tw) (3.36)
図3.20 通風式乾湿計