3.3.3 大気中の水蒸気量

大気中の水蒸気量は時と場所により大幅に変化していますが、大気中の水蒸気量はいくつかの表し方

があり、目的により使い分けられています。

(1)   水蒸気圧、(2)水蒸気密度(絶対湿度)、(3)混合比、(4)比湿、(5)相対湿度、

(6)露点温度。

また、水蒸気の影響を温度で表わす(7)仮温度、(8)湿球温度、(9)凝結温度などがあります。

 

(1)水蒸気圧

大気中の水蒸気の分圧で表したもので単位は普通はhPaです。空気の圧力をP、乾燥空気の分圧をP

水蒸気の分圧をeとすれば、

P=P+e

ダルトンの法則を思い出してください。

 

(2)水蒸気密度(絶対湿度)

単位体積の空気中に含まれる水蒸気の質量で表したもので、絶対湿度ともいいます。

単位は/m=k−3で表します。空気の断熱変化では膨脹・圧縮により体積が変わるので、水蒸気

密度は保存量ではありません。

 水蒸気の状態方程式(3.28)から、水蒸気密度は

ρ=e/(RT)                     (3.29)

で計算できます。水蒸気圧がhPa、温度がKで表されている時、水蒸気密度をg/m=gm−3の単位で

表わせば、

ρ(gm−3)=217e(hPA)/T

で求められます。

 

[問題] 水蒸気圧7hPa、温度3℃における水蒸気密度ρ(gm−3)を求めなさい。

   ρ217×7/276.15=5.50(gm−3

 

 図3.17(前述)のように温度が上がると、飽和水蒸気圧は急激に増加します。これを反映して、大気

中の水蒸気は、図3.18から対流圏の下層ほど多く、低緯度のほうが中緯度より多くなっています。また、

低緯度、中緯度とも夏の方が冬よりも水蒸気は多くなります。

 

(3)混合比

 湿潤空気(乾燥空気+水蒸気)の中の乾燥空気単位質量に対する水蒸気の質量の比(割合)を混合比

といいます。単位は/kです。分子と分母は同じkですが、分子は水蒸気の質量、分母は乾燥空気

の質量ですから、kgは略しません。

 

    図3.18 水蒸気密度の鉛直分布(雲と雨の気象学:水野量から作図)

 

 

 湿潤空気塊の質量をM、圧力をP、体積をV、温度をTとします。この空気塊を乾燥空気と水蒸気に

分けて考え、乾燥空気の質量をM、密度をρ、圧力をP、また、水蒸気の質量をM、密度をρ

圧力をeとします。体積Vと温度Tは共通です。いま、乾燥空気Mと水蒸気Mが共存している

わけですから、MをMで割れば混合比wが求められます。

 
 ここで、質量=密度×体積ですから、M=ρ×V、M=ρ×Vです。

    w=M/M=(ρ×V)/(ρ×V)=ρ/ρ

 また、e=ρT、P=ρT、P=P+e ですから

    w=(e/RT)/(P/RT)=(R/R)e/P

    R/R=0.622、e《P (eはPに比べ、極めて小さい)


P=P+eを代入すると(3.30)式になります。

 

w=0.622e/(P−e)≒0.622e/P            (3.30)

 実際の大気の下層では、ρ30×10−3kg/mより小さく、ρは1〜1.5k/mくらいです。
合比の値が小さいので実用的に単位としてg/kが使われることがありますから、注意してください。

30×10−3kg/m=30g/m)。

 混合比には重要な性質があります。その空気塊が混合比の異なる空気と混合することなく、未飽和の

まま水蒸気の凝結や新たな水蒸気の供給がなければ混合比は断熱変化に対し保存されます。空気が上

昇・下降し、温度、気圧が変わっても、水蒸気と乾燥空気の質量は変わりませんから。

 また、(3.30)式で水蒸気圧eを飽和水蒸気圧としたものが飽和混合比です。飽和水蒸気圧は温度だけ

で決まりますが、飽和混合比は温度と圧力に関係します。

 

 

図3.19 混合比の考え

 

 

[問題]500hPaの温度0℃における飽和水蒸気圧6.11hPaの飽和混合比(g/k)を求めなさい。

   飽和混合比=0.622×6.11/(500−6.11)=7.69g/kg

        ≒0.622×6.11/(500)=7.60g/kg

       状態方程式などで計算する場合は圧力はPa(1Pa=100hPa)を用いるが、ここでは分子、

分母が共に圧力なので×100を省略している。