3.2.6 断熱図(エマグラム)

 大気の状態を簡単に見るためのツールとして断熱図があります。断熱図にはいくつかの種類がありま

すが、日本ではエマグラム(図3.11)が使われています。エマグラムはenergy per unit mass diagram

から付けられた名前です。図にはいくつかの名前がついた線がありますが、この先で順次説明が出てき

ます。

エマグラムの縦軸は気圧ですが、気圧そのままではなくln(P)、自然対数で目盛られています。こ

れは気圧の自然対数が高度に比例し、図が使い易いからです。横軸は温度で℃になっていますが、273.15

を加えればケルビンKになります。

 乾燥空気が断熱変化をする時は温位は保存されます(変化しません)。温位は気圧と温度がわかれば

3.27)式から計算できます。あらかじめ(P、T)の組み合わせで温位を計算し、温位の等値線を描

いたものがエマグラムの乾燥断熱線です。乾燥断熱線は約45゜傾いた線で線上の数値は温位(K)で

す。

1000hPaで26.8℃の乾燥空気の温位は約300Kですから、この空気が600hPaまで上昇した時の温度は、

エマグラムで300Kの乾燥断熱線と気圧600hPaの線と交わった点を通る

 

 

図3.11 エマグラム

 

温度線の値−14.0℃になります。ある空気塊の(P、T)がわかれば、その点を通る乾燥断熱線上をた

どることによって、任意の気圧(高度)における温度がわかります。気圧、温度、温位の2つがわかれ

ば残りの1つもわかるわけです。では、300hPaで温位280Kの空気塊の1000hPaにおける温度は何度(℃)

でしょうか。そうですね、1000hPaにおける温度が温位ですから、約280−273=7℃です。

 図3.12の状態曲線は観測した各気圧における温度をエマグラムにプロットし、線で結んだものです。

気圧A、B、Cの空気の温位は、その点を通る乾燥断熱線に沿って1000hPaまで降ろした時の温度(K)

です。Bにある空気塊が乾燥空気で上昇する時は、そこを通る乾燥断熱線に沿って図の左上に変化しま

す。状態曲線は周りの空気の温度を表わし、空気塊は状態曲線上を動くのではありません。乾燥空気塊が

鉛直方向へまっすぐ上昇しようが、斜めに上昇しようが温度の変化は乾燥断熱線に沿い、温位は一定で

す。

あらかじめ各高度の温位を求めておくと、高度の異なる空気塊を同じ高度に持ってきたときの温度の

高低を直接判断することが出来ます。

 実際の空気は水蒸気を含み乾燥空気ではありませんが、飽和しない限りは乾燥空気の温位との差は小

さく、乾燥空気として扱っても差し支えありません。難しくいうと「近似的に・・・と見なせる。」、気

象ではこの言葉がよく出て来ます。「1万円の買い物に1円の違いは気にしない。」です。

 

 

[問題]850hPaの乾燥空気の温位が290Kであった。この空気塊が500hPまで上昇した時の温度をエマ

グラムから求めなさい。

    答え 約−35℃

 

 

 

図3.12 温位の概念図

 

 

[問題]図は温位の鉛直断面図です。A地点の上空300hPaを飛行機が飛んでいる。ここの空気(−40℃、

乾燥空気)を取り入れ、1000hPaに加圧し、機内へ供給している。機内温度を20℃に保つには何℃

冷却、又は加熱する必要があるか。

 

1000hPaに加圧、機内へそのまま供給した時の温度が必要なのですが。問題文の(−40℃、乾燥

空気)、1000hPaに加圧から温位の式で計算しようとすると・・・・どつぼにはまります。(1000

300)Rd/Cpは計算できないですね。図からA点の上空300hPaの温位を読み取ればいいわけで

す。図の上と右横にも目盛りが描いてあります。定規がないとつらいですね。

温位は333K、1Kくらいは誤差範囲です。

答えは40℃冷却です。

 

      問題図