熱力学第1法則の別の表わし方があります。
いま、凾pの加熱で圧力がP+凾o、比容がα+刄ソ、温度がT+凾sになったとします。
その時の状態方程式は
(P+凾o)(α+刄ソ)=Rd(T+凾s)
この式と熱力学第1法則(3.23)式から
凾p=(Cv+Rd)凾s−α凾o (3.24)
が導かれます。ここで、圧力を変化させないように加熱します。このときは凾o=0で定圧変化と
いいます。(3.24)式は
凾p=(Cv+Rd)凾s
となります。凾pの熱量で温度が凾s変化したわけですから、凾p/凾sは温度を1K(1℃)変化
させるのに必要な熱量で、比熱です。今は、圧力一定の変化を考えましたから、定圧比熱といいCp
と表わすと、
もう1つの熱力学の第1法則
凾p=Cp凾s−α凾o (3.25)
:Cp=Cv+Rd
が得られます。
*(3.24)式の求め方
状態方程式は(P+凾o)(α+刄ソ)=Rd(T+凾s)となります。
Pα+P刄ソ+凾oα+凾o刄ソ=RdT+Rd凾s
Pα(1+凾o/P+刄ソ/α+(凾o/P)(刄ソ/α))=RdT(1+凾s/T)
ここで、凾o、刄ソはP、αの微小変化で凾o/P、刄ソ/αは1よりも十分小さい値です。そうするとこの2つ
を掛けた(凾o/P)(刄ソ/α)は非常に小さくなるので、凾o/P、刄ソ/αに対しては無視できます。上式は
Pα(1+凾o/P+刄ソ/α)=RdT(1+凾s/T)
となります。Pα=RTですから上式を整理すると、
刄ソ=(α凾s/T)−(α凾o/P)
になります。この刄ソを(3.23)式に代入します。
凾p=凾t+凾v=Cv凾s+P刄ソ
=Cv凾s+P((α凾s/T)−(α凾o/P))
=Cv凾s+(Pα凾s/T−P(α凾o/P))
=Cv凾s+Rd凾s−α凾o :Pα=RdT
=(Cv+Rd)凾s−α凾o (3.24)
比熱は単位質量の物体の温度を1K(=1℃)変化させるのに必要な熱量です。気体の場合は容積変化の有無により
定容比熱と定圧比熱があります。
膨脹による仕事を伴わないときは,その分少ない熱量で温度が同じだけ変化するため
Cv<Cpになります。
乾燥空気の場合はCv=717JK−1kg−1、Cp=1004JK−1kg−1になります。
熱力学第1法則の特別な場合を考えます。一つの式からいろんなことが分るわけです。
等圧過程 凾o=0 : 凾p=Cp凾s=(Cp/Cv)凾t
熱は温度変化(内部エネルギー)に使われる。
等温過程 凾s=0 : 凾p=−α凾o=P刄ソ=凾v
熱は体積変化(仕事)に使われる。
等容過程 刄ソ=0 : 凾p=Cv凾s=凾t
熱は温度変化(内部エネルギー)に使われる。
断熱変化 凾p=0 : Cp凾s=α凾o
Cv凾s=−P刄ソ
膨脹(仕事)すれば温度(内部エネルギー)が下がる。
圧縮すると温度は上がる。
[問題]気圧が変化しないまま水蒸気の凝結で大気に単位質量当たり約3000J
の潜熱が放出されとき、気温は何度変化するか求めなさい。
気圧が変化しない、熱力学第1法則の定圧過程の例です。
凾p=3000Jkg−1、Cp=1004JK−1kg−1
定圧変化ですから、凾s=凾p/Cp≒3K(3℃)
温度は3℃上昇する。