ある気体についてなんていわずに、気体の種類によらない状態方程式を導きましょう。
ある気体の分子量がMの時、その気体M(Kg)を1キロモル(Kmol)と定義します。酸素(O2)
の分子量は32.00ですから酸素32.00Kgは酸素1キロモルで、64.00Kgは64.00/32.00=2キロモ
ルになります。水蒸気(H2O:分子量18.02)は18.02Kgが1キロモルです。
分子量Mの気体がmKg存在するとき、その気体のキロモル数nは
n=m/M (3.13)
になります。複数の気体(種類を添え字iで表わします。)のそれぞれ1キロモルを考え、分子量を
Mi、質量をmiとします。キロモル数は1ですから、
m1/M1=m2/M2=・・・・・=mi/Mi=1(キロモル)
となります。キロモル数が2でも5でも同じことです。また、(質量)/(分子量)はその中に存在
する分子の個数を示します。したがって、同じキロモルの気体には同じ個数の気体分子が含まれる
ことになります。どんな気体でも1キロモルに含まれる分子の数は同じで、アボガドロの定数とい
い、
アボガドロの定数NA=6.022×1026
です。キロモルの定義は「ある量の気体の分子の個数がアボガドロの定数に等しいとき、その気体
が1キロモル存在する。」というものです。
あと少しで気体の状態方程式の完成です。
アボガドロの仮説
「同じ数の分子を含む気体は同一温度、同一圧力のもとでは、同一体積を占める。」
というものがあります。ここで1kmolの気体(同じ数の分子を含む)について考えると、
同一温度(T)、同一圧力(P)では同一体積(v:1キロモルの気体が占める体積)ですから、(3.12)
式のPv/T=ある値になり、(3.12)式のCは全ての気体についての共通の定数となります。
1キロモルの気体についての状態方程式は
Pv/T=全ての気体についての定数
=R*
Pv=R*T (3.14)
R*:一般(普遍)気体定数、
8314.3JK−1kmol−1
と書けます。
(3.14)式は1キロモルの気体についての状態方程式で、すこし不便ですから任意のnキロモルの
気体に拡大します。(3.14)式をn倍します。
Pnv=nR*T
V=nv :nキロモルの気体が占める体積
PV=nR*T
さらに、単位質量の気体についての状態方程式を導きます。
上式をnキロモルの気体の質量Mで割ります。
PV/M=nR*T/M
ここで、密度=ρ=M/V、比容=α=1/ρ、キロモル数=n=M/m
(m:気体の分子量)を上式に代入、整理します。
P=ρRT :R=R*/m (3.15)
Pα=RT (3.16)
Rはある気体についての気体定数で、一般気体定数をその分子量で割ったものに等しいものです。
この式をボイル・シャルルの法則、あるいは気体の状態方程式と呼びます。また、この式に従う気体
を理想気体と言います。実は、あまり高い圧力や低い温度ではボイル・シャルルの式は成立しません
が、気象で取り扱う範囲では、乾燥空気は理想気体と見なしても問題はありません。
乾燥空気の気体定数Rdを求めてみましょう。まず、乾燥空気の平均分子量mは次のようにして求
められます。空気は混合気体で、その組成は表3.2のようになっています。水蒸気を除いた分が乾
燥空気で、主成分は近似的に窒素、酸素、アルゴンと考えられます。それぞれの容積率と分子量か
ら乾燥空気の平均分子量mは
m=28×0.78+32×0.21+40×0.01=28.96
で、したがって乾燥空気の気体定数Rdは(3.15)式から
Rd=R*/m=287Jkg−1K−1
になります。
水蒸気は分子量が18.02ですから気体常数は461Jkg−1K−1になります。Rdの単位は単位質量
当たり単位温度当たりのエネルギーで、比熱と同じです。
R*の単位JK−1kmol−1とは違いますから注意してください。
表3.2 地表付近の大気組成
成 分 |
分子量 |
容積% |
重量% |
窒素(N2) 酸素(O2) アルゴン(Ar) 二酸化炭素(CO2) オゾン(O3) 水蒸気(H2O) |
28.02 32.00 39.94 44.01 48.0 18.02 |
78.09 20.95 0.93 0.03 2×10−6 不 定 |
75.53 23.14 1.28 0.0456 3×10−6 不 定 |
乾燥空気の状態方程式はRdを使って
P=ρRdT (3.17)
Pα=RdT (3.18)
となります。
状態方程式は気圧(圧力)P、密度ρ(または比容α)、温度Tの三つの変数を含んでいますが、
二つの変数が分れば残りのものを求めることが出来るわけです。
[問題]圧力800hPa、温度0℃の時の乾燥空気の密度を求めなさい。
(3.17)式を使いますが、単位に気を付けましょう。
Rd=287Jkg−1K−1
P=800×100(Pa)、T=273.15(K)、Rd=287Jkg−1K−1
ρ=800×100/(287×273.15)=1.02kgm−3
[問題]気圧1020.00hPa、密度1.225kgm−3の乾燥空気の温度を求めなさい。
Rd=287Jkg−1K−1
(3.17)式から
T=P/(ρRd)=290.12K=17.0℃