3.2 乾燥空気
これから、大気(空気、気体)の性質・状態について調べていきます。天気予報で気になるのは、晴
れ、曇り、雨ですね。雲や雨は大気中の水分が成せる技です。この水分の在る無しで大気の状態は大き
く違います。まず、議論を簡単にするために乾燥空気(水分を含まない空気)について述べます。
本節の重要事項
・状態方程式 P=ρRdT
・熱力学第1法則 儔=Cv・dT+P・dα
・乾燥断熱変化 温位θが保存 θ=T(1000/P)0.286
・熱力学図(断熱図) エマグラム
大気の状態は圧力、温度(絶対温度)、密度で記述でき、これらのものを状態変数といいます。3.1節で
学んだように、圧力は気体分子の運動による衝突の力(単位面積あたり)、温度は気体分子の運動エネル
ギーに関係し、密度は単位体積中の分子の質量です。
3.2.1 ボイルの法則
1661年、ボイルとフックの実験
図3.8 ボイルの実験
図3.8のように「J」字型のガラス管に水銀を入れ、その量を変えることによって気圧と体積の関係
を導きました。この管は右側は開口していて左側は閉じているものです。
最初は左と右の水銀の高さが等しいようにします。この時は大気の圧力と左側のガラス管に閉じ込め
られた空気の圧力は等しくなっています。次に右側の管に水銀を注ぐと左側の水銀面が上昇し、その分
だけ中の空気の体積は減り、押し込められたために圧力は増します。この圧力の増加分は、水銀柱の水
銀の差による重力です。水銀の量を変えて何回も実験し、その時の管に閉じ込められた空気の体積と圧力
の関係からボイルの法則と呼んでいる関係が導き出されました。
ボイルの法則 : 温度が一定の時、圧力Pと体積Vの積が一定
Tは一定 PV=C :C(定数) (3.5)
温度をT1に保った時とT2に保った時も(3.5)式は成り立ちますが、
それぞれのC(定数)は異なります。
温度T1を一定に保った時 T=T1 PV=C1
温度T2を一定に保った時 T=T2 PV=C2
温度Tnを一定に保った時 T=Tn PV=Cn
つまり、(3.5)式のC(定数)は温度だけによって決まるもので、このような時にCはTの関数といい、
数学ではこれをf(T) と書きます。温度Tが決まればf(T)の値が決まります。この時、(3.5)式は
Tは一定 PV=f(T) (3.6)
と表わせます。
*関数について、ちょっとだけ復習。
y=f(x)=x+1 であれば、x=1の時はy=f(1)=2
xが決まればyが決まる時、yはxの関数と言い、y=f(x)と表わします。
z=3x+2xy+3の時は、zはxとyで決まり、z=f(x、y)と書きます。
3.2.2 シャルルの法則
ボイルとフックの実験の直ぐ後に気圧と温度、体積と温度に関係する重要な関係が見出されました。
シャルルは空気の体積が変わらないようにして、空気を加熱して温度を上げる実験をしました。そう
すると、空気の圧力は増加しますが、同じ割合で増加することが分りました。初めの圧力をP0とすると、
温度が1℃上がる毎に圧力はP0の1/273.15ずつ大きくなりました。
温度0℃で圧力P0の気体を加熱し、温度t℃、圧力Pになったとします。そのときに、次式が成り立
ちます。
体積Vは一定 P−P0=(P0/273.15)t (3.7)
1802年、ゲイ-リュサックは体積と温度について同じような関係を得ました。圧力を一定にして空気の
温度を上げていくと、空気の体積は温度が1℃上がる毎に初めの体積V0の1/273.15ずつ増えていきま
す。
温度0℃で体積V0の気体を加熱し、温度t℃、体積Vになったとすると
次の式(シャルルの法則)が成り立ちます。
圧力Pは一定 V−V0=(V0/273.15)t
V=V0(1+t/273.15) (3.8)
ここで温度を−273.15℃に下げたとすると、(3.8)式でt=−273.15だから
V=V0(1+t/273.15)=V0(1+(−1))=0
となり、空気の体積は無くなることになります。この考えはケルビンによって導入され、この考え得る
最低の温度(−273.15℃)を絶対零度といいます。(3.8)式を変形すると、
V/(t+273.15)=V0/273.15
T=t+273.15 と表わすと
V/T=V0/273.15 :V0は0℃の時の体積
圧力Pが一定のとき、 V/T=一定(C) (3.9)
温度の換算
Tk:K(ケルビン)
Tc:゚C(摂氏:セルシウス)
Tf:゚F(華氏:ファーレンハイト)
Tk=Tc+273.15
Tc=(Tf−32)×5/9
Tf=(Tc×9/5)+32
となります。
図3.9 温度
Tを絶対温度といい、単位はK(ケルビン)で表わします。日常生活では℃(アメリカでぱF)を使
いますが、物理(気象)ではKを使います。計算するときは注意しましょう。
ボイルの法則(3.5)式を(3.6)式で表した時と同じ考えで、(3.9)式を表わすと
圧力Pが一定のとき V/T=g(P) (3.10)
と書けます。